これは、劇場版第一弾に登場した、オリオン星座のジャガーの話です。かつては「最強の聖闘士」と呼ばれていた彼の現役時代を、私なりに想像してみました。

戦士の休息

「見事だ…星矢……。お前達こそが本当の…セイ…ント……」
射手座の黄金聖衣を装着した星矢の一撃に敗れ、再び闇の世界に戻りつつある意識の中で、かつて「最強の聖闘士」と呼ばれていた男は、はるかな昔出逢った、星矢と同じ、真っ直ぐな目を持った少年の事を思い出していた。



聖域の片隅で、修業に励む少年の元気な声が聞こえる。
「アルファスの調子はよさそうだな」
その声に、少年は「あ!ジャガー!」と叫び、笑顔で振り返った。
声の主は、聖闘士最強と言われるオリオン星座のジャガーだ。
「続けろ、アルファス!」ジャガーは、少年の師であり兄でもあり、すでに聖闘士を引退している親友のエルダーの横に立ち、一緒にこの少年のフォームを見つめていた。
「エルダー、アルファスは次の聖衣争奪戦に出るのか?」
「ああ、やっとその権利を得たんだ。ここまで来たら、あとはあいつ次第だからね」エルダーは感慨深げに言った。たった一人の可愛い弟を、この厳しく、いつ命を落とすとも知れない世界に入れたくなかった。だが、アルファスは自らの道を選んだのだ。兄と同じ道を。そして何より、崇拝する勇士、ジャガーの歩む道を。
ジャガーもこの、心の優しい親友の心の葛藤を知っていた。そしてその想いは、彼自身の物でもあった。

それからおよそ1ヶ月後―

アルファスは、聖衣に身を固めて出かけようとするジャガーの姿を見かけた。
「ジャガー!どこに行くの!?今日は決勝戦なのに!」
ジャガーの腕を掴もうとするアルファスを、エルダーが引き止めた。
「ジャガー、教皇に呼び出されたようだが?」
「ああ、東の地を荒らす者達に、制裁を加えよとの命令が下された。」
その言葉を聞き、少年は寂しげに呟いた。
「ジャガーが居てくれないと、勝つ自信ないな…」
「アルファス!情けない事を言うな!」
ジャガーは少年に向き直った。「聖闘士は己の力で闘うものだ!最初から人に頼るようでは、聖闘士になる資格は無い!」
「ジャガー…」尊敬する勇士の、思わぬ強い口調に一瞬たじろいだ。本当は、今日の自分の闘いをジャガーに見てもらえない事が寂しいのではない。それ以上に、自分がジャガーについて行き、その闘いを見届ける事が出来ない事が悲しいのだ。
聖闘士になれば、この人と―この勇士と行動を共に出来る。誰よりも強く「真の聖闘士」と人々から称えられる、この人をもっと見ていたい!
「アルファス、闘技場に行くぞ。」
「うん。」
道すがら、アルファスはつぶやいた。「僕もジャガーみたいになれるかな…」
「ん?」
「この時代があの人を必要としているみたいに、僕も受け入れてもらえるのかな…」
「この時代…か……」エルダーも、親友の事を考えていた。ジャガーは確かに、この時代が必要としている、時代と共に生きる男だ。
――そのような男が必要な時代とは、多くの人々の血が流される、不幸な時代でもあるのだが――

――ジャガー、今回も無事に帰ってこい――

エルダーの思ったとおり、やはりその時代はまだ、この勇士に休息を与えようとはしなかった。ジャガーは、東の地でも勝利をおさめたのだ。だが―
傷ついた体で聖域に戻った彼は、途中出会った兵士に、アルファスの敗北を知らされたのだった。
「アルファス!」
聖衣をつけたまま友の家に飛び込むと、そこにはエルダーに包帯を巻き直して貰っている最中のアルファスがいた。
「ジャガー!お帰りなさい!」少年は憧れの勇士の帰還を笑顔で出迎えたが、次の瞬間には、痛みと、自分が置かれた状況を思い出し、すぐにその笑顔を引っ込めるしかなかった。
「ジャガー、ごめんなさい…。勝てなかった……。」
「ああ」
他にも掛けるべき言葉があったのかも知れない。しかし、生々しい傷やあざのある細い体を見たジャガーは、小さく安堵の息をもらす事しか出来なかった。

「アルファスがね、キミはこの時代が必要としているってさ。」
アルファスが眠ったのを見届け、エルダーとジャガーは家の外に出ていた。そろそろ空には星がきらめき、人間が宇宙の一部であると実感出来る時間だ。
「アルファスが?」しかし彼は知っていた。時代に求められた者は、いつか時代と共に消え、忘れ去られる運命だという事を。
「もしもこれで諦めないようなら、また修業を続けさせるつもりだ。」
友の言葉を背中に聞き、ジャガーは一つの星を見ていた。その輝きは、まるであの、ひたむきなアルファスの瞳のようにも見えた。

――だが、それも既に遠い過去…アルファスもエルダーもいない今では、ただの昔話だ――

――だが――

争いの女神エリスに魂を売り渡し、ゴーストセイントとなったジャガーは、再びアルファスと同じ、真っ直ぐな目を持つ少年達に会えたのだ。
――そうだ…これからはこの男達の時代なのだ――


勇士は再び―いや、今度こそ―――永遠の休息を得たのだった。


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